商標の国際登録出願(マドプロ)とは?必ず知っておきたい7つのポイント

目次

はじめに

商標の国際登録出願とは、外国で商標登録をするための制度です。

「商標登録」という制度は、全世界、各国ごとにあり、得られる商標権も各国ごとになります。

したがって、日本で商標登録をしても、外国では効力がありません。

ここでは、外国で商標登録を検討する際にあらかじめ知っておきたい、「国際登録出願」の7つのポイントをご説明します。

ポイント1:「国際登録出願(マドプロ)」と、「直接出願」の違いを把握しよう

外国で商標登録する手段はいくつかありますが、国際登録出願(マドプロ)は、その中の代表的な選択肢の一つになります。

もう一つの代表的な選択肢は、「直接出願」と呼ばれるものです。

別の呼び方ですと、「各国出願」と言ったりもします。

直接出願とは

直接出願とは、例えば、アメリカと中国で商標登録したい場合、アメリカの特許庁に商標申請をしてアメリカで商標登録し、中国の特許庁に商標申請をして中国で商標登録し、といったように、各国ごとに、1カ国ずつ、その国の特許庁に手続きをする方法です。

直接出願の最大の特徴は、各国ごとに、その国の弁護士や弁理士(現地代理人と呼びます)を雇う必要があることです。

例えば、アメリカと中国で商標登録する場合、直接出願であれば、必ずアメリカの弁理士と、中国の弁理士を雇う必要があります。

これは、アメリカや中国の特許庁が、外国在住の外国人と直接やりとりするのが非常に難しいため、必ず、その国の有資格者の代理人を通してください、という趣旨のルールです。

国際登録出願(マドプロ)とは

一方で、国際登録出願は、各国の特許庁に直接手続きするのではなく、「国際事務局」という組織に対して、商標申請の手続きをする方法です。

そして、この「国際事務局」は、各国ごとに出先が設けられており、日本にも特許庁内に窓口があります。

このように国際登録出願の場合、日本の特許庁内にある国際事務局の出先に手続きをすればよいですので、外国の弁理士を雇わずとも、日本の弁理士に依頼をすれば、手続きを行うことができます。

そして、国際登録出願の最大の特徴は、「複数の国を一度に指定可能」という点です。

国際事務局に提出する書類に、商標登録したい国を記載すれば、それらの国について一度に商標登録することができます。

こうやって聞くと、ものすごく便利そうだと感じますよね。

しかし、国際出願も万能ではなく、注意しなくてはならない点がありますので、以下の「ポイント2」以降では、そのあたりを中心にご説明します。

ポイント2:国際登録出願を使えば世界中で商標登録できるわけではない

残念ながら、「世界中で有効な商標登録」という制度はありません。

確かに、国際登録出願を使うと、全ての国ではありませんが、条約に加盟している100カ国以上に一度に商標申請はできます。

しかし、商標登録がみとめられるかどうかは、その国ごとに審査がありその国ごとの判断となります。

例えば、アメリカでは商標登録できたけれど、同じ商標を中国では商標登録できなかった、ということは十分あり得ます。

そして、国際登録出願は、条約に加盟している100カ国以上の国に、定額でお得に商標登録できる制度でもありません。

つまり、制度上は100カ国以上に一度に商標申請できますが、その費用は、1カ国増えるごとにきちんと加算されます。

なので、確かに、国数が多い場合、1カ国ずつ外国の弁理士(現地代理人)を雇わなくて良い分、直接出願より安くなる場合がありますが、それであっても、全世界で商標登録するとなると、非常に多額の費用がかかります。

まずは、直近で商標を使う国を一つずつ選んで、数カ国の商標登録から始めるのが、現実的な方法になります。

ポイント3:直接出願と国際登録出願、どちらが安いかは結構判断が難しい

費用については、ケースバイケースになりますが、1、2カ国程度であれば、直接出願の方が安い傾向にあります。

一方、3カ国程度まとめて商標登録するとなれば、国際出願の方が安くすむ傾向にあります。

しかし、この費用については一概には言えないので注意が必要です。

それは、国際登録出願に独特な「不測の費用」が発生する可能性があるためです。

詳しくは、下記のポイント4でくわしく説明していきます。

ポイント4:国際登録出願(マドプロ)でも、現地代理人の費用がかかる場合がある

実は、国際登録出願を使っても、各国ごとに審査が行われて、その結果として、なんらかの問題を指摘された場合は、その後の手続きは、各国の特許庁に直接行う必要があります。

つまり、その場合は、あらためて現地代理人を雇う必要があるということです。

例えば、アメリカと中国とフランスに国際登録出願した場合において、中国とフランスは審査で何も問題がないと判断されてすんなり国際登録になったものの、アメリカだけは、指定商品役務の表現が適切ではないといった拒絶理由通知がなされる場合があります。

その場合、アメリカだけアメリカの弁理士(現地代理人)を雇って、この問題を解消する手続きをする必要があります。

そのため、国際登録出願を使った場合、当初のお見積もりでは複数国に直接出願するより安くなる計算だったとしても、最終的には現地代理人の報酬が必要になり、直接出願とそれほど変わらない費用になることがあります。

ポイント5:国際登録出願は、日本での商標登録(出願)の範囲内でしかできない

国際登録出願は便利ですが、そのベースとして、日本での商標登録(出願)が必要です。

外国で商標登録を検討している人は、日本での商標登録は済ませている場合も多いですから、「私は、すでに日本で商標登録しているからこの点は大丈夫だな」と思うかもしれません。

しかし、それでもなお、結構、問題が起きる場合があります。

まず、国際登録出願する商標は、日本で登録しているものと、完全一致のものである必要があります。

なので、例えば、日本で商標登録している商標が、カタカナで「アイリンク」と表示したものだった場合、外国ではアルファベットの「ilink」で登録したいと思っても、国際登録出願ではそういうことはできないのです。

また、もちろん、日本で記載した指定商品役務(権利範囲)に、足りないものがあった場合にも、国際登録出願においてそれを追加することはできません。

その場合は、もう一度日本で商標登録し直す必要があります。

ポイント6:マドリット協定に加盟していない国では使えない

マドリット協定に加盟している国は100カ国以上あるので油断しがちですが、日本にとって身近な、「台湾」「香港」「マカオ」が加盟していないので、これらの国では国際登録出願が使えません。

これらの国で商標登録する場合は、直接出願を使うことになります。

ポイント7:アメリカは個別に拒絶理由通知が来やすい

国際登録出願においては、各国ごとに拒絶理由通知が来ることがあり、その場合は途中から現地代理人を雇う必要があるとお伝えしましたが、その最たる国が、アメリカです。

アメリカは、商標の「類似」については、それほど厳しくありませんが、「指定商品役務の書き方」は、非常に厳しい独自のルールを設けています。

ですので、国際登録出願にアメリカを含める場合は、かなりの確率(少なくとも50%以上)で、途中で現地代理人を雇う必要があると考えるのが無難です。

その他の国でも、拒絶理由通知が来やすい国がいくつかあります。

例えば、中国は「類似」の判定が厳しいので注意が必要です。日本の弁理士の感覚だと全然類似していないと感じる商標同士でも、中国の審査官は「類似している」と判断することが多くあります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

国際登録出願(マドプロ)は、かなり便利な制度なのですが、実は、結構複雑な制度です。

各国出願の場合、現地代理人の報酬がかかりますが、その分、現地代理人からアドバイスをもらえるメリットがありますので、慣れない弁理士は、国際登録出願はあまり使わないということもあるようです。

アイリンク国際特許商標事務所では、50年間つちかった外国出願のノウハウがありますので、お気軽にご相談ください。

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